映画 東京フィアンセ Tokyo Fiancée

『東京フィアンセ』はベルギー人女流作家アメリー・ノートン Amélie Nothomb 原作。日本に憧れる「アメリー」を女優ポーリン・エチエンヌ Pauline Etienne が演じる。

夢見がちなベルギー女子アメリーは20歳で子供の頃から憧れていた日本にやってくる。生活のためにフランス語の個人レッスンをはじめた彼女は、リンリという日本人の青年と出会う。時にコミカル、時に詩情あふれる展開。カルチャー・ショック連続のなかで、アメリーはそれまで知らなかった日本を発見していく。

『東京フィアンセ』はアメリー・ノートンの小説Ni d'Ève ni d'Adam(2007年)が原作。主演女優ポーリン・エチエンヌの恋人役は井上泰一(新人/ロンドン在住)、監督ステファン・リベルスキー。

(主にフランス語/英語字幕(劇場によっては仏・蘭語字幕)/100分)

 photo: O'BROTHER DISTRIBUTION http://www.obrother.be/

原作者アメリー・ノートンは1966年7月9日ブリュッセルのエターベーク地区生まれ。 神戸生まれというのはフィクション。本名はファビエンヌ・クレア・ノートン Fabienne Claire Nothomb。父は男爵の地位を持つ外交官で、彼女が生まれたすぐ後、1968年から1972年まで大阪に領事として赴任、その後も北京、ニューヨーク、バングラディシュ、ミャンマー、ラオスなどを歴任した。作家アメリー・ノートンの小説の舞台や題材として日本が取り上げられるようになったキッカケは彼女が2歳から5歳まで家族で過ごした経験にある。父はその後1988年から1997年には大使として日本に赴任。 1992年に小説家デビューを飾ったノートンは毎年1冊出版するペースで執筆を続ける。

1999年に『畏れ慄いて』Stupeur et Tremblements がヒット。外国人の目を通した日本企業社会の不条理を描き、話題となる。日本文化の負の部分を指摘した過剰な演出のため拒否感を示す日本人も多いが、コメディーとしてとらえれば案外楽しく見ることができる。『東京フィアンセ』も同じ路線上にあるが、より瑞々しい感性に貫かれた映像美で違和感は少ない・・・はず。

【観劇後コメント】

アメリー役ポーリン・エチエンヌの好演が光った。驚いたり困ったりしたときのコミカルな表情、軽やかな動き、日本の風景に若く美しい肢体が映えるヌードシーンへの挑戦など、1989年生まれ現在25歳の才能が存分に活かされた。原作者ノートンが抱く日本への幻想や憧れを体現しつつ、現代的な舞台に自然体の姿を見せることができた。「伝統文化、自然、テクノロジー、富士山、芸者」という西洋人が抱く日本へのステレオタイプを描きつつ、ユーモアで現実を見せる接点に彼女が位置しているようだ。

相手役リンリを演じる井上泰一は、ひょうひょうとした現代っ子をこれまた自然体で見せた。控えめな表現で淡々としているためにポーリン・エチエンヌの演技が映える結果となって、この配役は吉と出たようだ。二人の関係をリードする役割を果たし、セクシーな面も申し分ない。

全体に洒脱なユーモアに満ちた作品で、劇場では何度も笑いが生まれていた。現代東京の日常や非日常のシーンには日本人が観るよりも、欧米人が観るほうが刺激を受けるのではないだろうか。日本についての西洋的な思い込みや勘違いを、自己パロディーとして丁寧に作り込んでいる部分に制作サイドの遊び心を感じる。

また「ヌードシーンが多すぎるのではないか」という意見も観劇前に聞いていたが、たしかにもっと控えめでも作品の質には影響がない気がする。肉体美を強く意識させるシーンは、やはりヨーロッパ的な美意識で作られた映画という印象を受けた。日本人が監督だったら、こうはなっていないだろうという映画でもあり、やはりこれは日本人にも多いに観てもらって、笑ったり考えてもらいたい映画だな思った。日本での上映やDVD発売をぜひ進めていただきたい。

 

映画『畏れ慄いて』