チルチルのひとりごと ワインは誰が注ぐべきか?

日本では、嘆かわしいことに財務省という立派なお役所でセクハラ事件が発生。西洋と東洋の「酒と女」を巡る「酒のつまみ的エッセイ」をお届けします。皆さんのお考えやいかに!?

さて、件のニュースで被害にあったのは女性ジャーナリスト。スキャンダルを追いかけ回し、火のないところに煙を無理やり捏造するくらいの業界が隣接する位置にいる相手だというのに、エリート官僚さんも危機意識が希薄だよな〜と、驚いた庶民らは次の瞬間には密かにほくそ笑んでいるのです。常にスキャンダルに飢えていますから。

女性が接客するお店に行って、言葉遊びをしたかも」と、辞任した財務次官は述べたようです。クラブやスナック、バーなどでしょうか。プライベートな時間につい気を許して「おっぱい触っていい?」という発言。この声の主であるエロオヤジが市井の一般人なら、ここまで大きな問題にならなかったかもしれません。 

ジャズのBGM、氷をアイスピックで砕く音、、、確かにドレスを着た女性がウィスキーの水割りを作ってくれるような雰囲気が録音された音声から漂ってきます。美しい女性(記者?)に美酒。ストレスの多い仕事からの解放。ああ、自由奔放に会話を楽しみたい。気の利いた際どい話が俺は大好きだ〜。という次官の人柄が伝わってきます。ただ、「気は利いていなかった」らしいですよ。あなた、どうやら嫌われていたようです。残念!

 

私がここで比較したいのが、日本と欧州での「女と酒」にまつわる文化の差。 

西洋は伝統的に女性(特に年配の女性)に敬意を払い、フランス料理のきちんとしたお店に行けば、ギャルソンが年上の女性から順にワインを注いで回ります。基本はレディーファーストでお酒や食事が提供され、男性陣は後回し。もっとも、ワインのテイスティングをするのは、そのテーブルの「ホスト」である主人(男性)かもしれませんが、ワインに詳しい女性がいるならば、その人に任せるというケースも珍しくはないでしょう。

高級店ではソムリエやギャルソンがワインのお代わりを注いでくれますが、もっとカジュアルなお店なら最初だけお店の人が注ぎ、その後は客らが自由にボトルを扱っていいことになります。

あ、グラスが空だわ、お注ぎします!」と日本人女性がボトルを手に取り、男性に注ぐことがありますが、ベルギー在住10年で「西洋かぶれ」かもしれない私には、ちょっと違和感があります。(ごめんなさい。お気遣いは嬉しいのですが)「女性によるお酌」の文化は、やはり東洋のものです。西洋しかもワインを同席の女性に注がれるのを、欧州人に見られると恥ずかしいと思うのです。

場所がベルギーでも、これが日本料理店で日本酒を徳利からお猪口にお酌されるというなら、まだ何か言い訳が立つような気もします。もちろん、こちらも女性にお注ぎしますし。

したがいまして、レストランに行ってワインを飲む場合は、男子たるもの常に女性のグラスの量に注意を払い、さらにお水の種類(スパークリングか普通のものか)にも注意して、タイミングよく注ぎ足すべし、という役割があるわけですな。

さら議論を発展させると、なぜ男性が女性にワインを注ぐ役割なのか、男女は平等なのだから、気がついた人が注ぐという自由なルールにすればいいじゃないかという新発想も生まれます。年配の女性を優先させるのも合理的じゃないから、お店側の都合のいいようにテーブルの端から順番にサーブするという新ルールはいかがでしょうか? 

合理主義的な北欧あたりでは年齢性別無視ルールがあり得そうですが、文化ってなかなか一筋縄ではいきません。そして、東西の文化の差というと、何か上下関係がありそうで誤解を招きそうですね。「文化の違い」と言い換えましょう。女性もお酌をするという習慣のが、日本の文化にあり、それが普通であると。欧州では男性が女性をもてなすことに喜びを感じると。それは違いであり、どちらが優れているとか劣っている、ではないのでしょう。敬意も愛情も、形だけで薄っぺらい場合もあります。

「男らしさ」「女らしさ」ってなんでしょう。その役割をその土地の文化伝統によって守らなければならないのでしょうか。

でも、、、我々は伝統の奴隷ではありません。ワイン飲みながら、議論しようじゃありませんか!(笑)

というわけで、ごめんなさい。オチも結論もないんですけど、ご自由にどうぞということで。 

24.apr.2018 by Tyltyl

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