ミチルのひとりごと クレープ屋さん

サブロン広場からそう遠くない場所に、お腹がすいていたミチルが見つけた、クレープ屋さん。ベルギーに住んでいるくせに、ワッフルよりも、クレープの方が口に合うミチルは、クレープ店を見つけると入らずにはいられません。

 

若いカップルが2人で頑張って切り盛りしているその店は、テーブルも6つしかなく、15人も入ると一杯になってしまうような場所。丁度1つだけ空いた席に腰を下ろして、メニューを見ていると、隣のテーブルの人たちに、美味しそうなワッフルやクレープが運ばれてきました。小さなテーブルに7人で、所狭しと座っているその人たちは、言葉から察するに、ギリシャ人のグループのよう。

彼らが、わいわいと楽しそうに歓談している中、次々と運ばれてくるスウィーツを美味しそうと見ていると、最後に来たのが、リンゴとクリームがたくさんのっている、ワッフル。そして其のワッフルの上には、とても小さなピンク色の一本の火のついたロウソクが

そう、誕生日のワッフルだったのです。グループのみんなが彼女のために、其の国の誕生日を祝う歌を歌い始めました。歌が終わると、ミチルも含めた、他のテーブルのみんなもおめでとうの拍手。彼女の隣に座っていた男性が、フランス語で、他のお客さんにも聞こえるように、わざと、「キミも、もう30歳になったなんてね。」と言ってみんなを笑わせていました。誕生日を迎えた、50歳くらいの女性は、うれし涙を拭いていました。

彼女は、テーブルの端に座っていましたし、おそらく、こんな小さなクレープ屋さんで、今日、自分の誕生日を祝ってもらえるとは想像していなかったに違いありません。其のサプライズと、温かい友情が嬉しかったのでしょう。それを見ていたミチルも、とても心の中が温かくなりました。小さな一本のロウソク。でも、それが立っているだけで、素晴らしい誕生日ケーキの出来上がり。そして親友たちに祝ってもらえたら、それは記念に残る、素敵な誕生日に違いありません。

3月の日曜日のある昼下がりの出来事でした。

 

23.mar.2015

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