今、ベルギー政治で話題の「神風連立」とは?

KAMIKAZEの文字が連日ベルギーの新聞上を舞っている。なぜ「神風」が登場するのか? 1.jul.2014

「神風」の意味をご紹介する前に、前提となるベルギー政治の基本と現状を確認しよう。ベルギーの選挙は比例代表制を基本にしており、死票が出にくいメリットはあるものの、多くの政党が乱立してまとまりにくい構造的デメリットがある。北と南で言語が違うのも情況を複雑にさせている。

現在、2014年5月25日に選挙が終わり一月以上経つが、中央の連邦政府は依然として組閣されていない。7月1日現在の情況としては、フィリップ国王から調整役 Informateur の任務を仰せつかったMRのシャルル・ミシェルが各党の代表と協議を重ねているところだ。

当然のことながら、選挙で勝った議席数の多い党が政権与党となるはずで、かつ連立を組むならイデオロギーの近い政党が一緒になるはずである。しかし、ベルギーの情況は込み入っている。

単純に見て、連邦レベルで最大の党はN-VA(33)、第二党はPS(23)、第三党がMR(20)である。しかし彼らの議席は絶対的な決定権を持つほど開いてはいない。N-VAは保守右派、PSは社会主義左派、MRは中道リベラル派。

極右のフラームス・ベランフや環境派などは、規模も小さく主張も極端なので、連邦政府に入ることはまずない。キーになってくるのは中規模政党だ。

キリスト教系保守派 CD&V(18)は、すでにN-VAと連立を合意している。フランダース政府はN-VAとCD&Vのみで進めようというのが彼らの意図だ。連邦レベルでN-VAとCD&Vを中心とした連立がうまくいけば、現在のフランダース政府大統領クリス・ペーテルス(CD&V)が連邦政府首相になるのではないかという憶測もある。

次に、オランダ語系中道リベラルOpen VLD(14)も重要な存在だが、「フランダース政府に入れてくれないなら連邦も入らない」というALL or NOTHING戦法を展開中である。

そしてオランダ語系社会主義政党SP.A(13)は、あまり注目されていないが、ディ・ルーポ政権が存続するなら当然組閣に関わってくるだろう。

最後に紹介するのがワロン地方南東部に根強い支持基盤を持つキリスト教系保守のcdH(9)。オランダ語系のCD&Vとは言語が違うがイデオロギーの面では共通している。

国王に組閣の調整を委任された際に、N-VA党首バート・ド・ウェーヴァーは、N-VA、CD&V、MR、cdHという「中道右派政権」を目指したが、土壇場になってcdHが「ノー」と言ったために残りの3党では過半数に達せず組閣に失敗した。

 

さて、ここにきて注目を集めているのが、「神風連立」である。具体的には、N-VA、CD&V、MR、Open VLDの連立を指し示す。保守2党とリベラル2党の連携であり、オランダ語系3党に唯一フランス語系からMRが入る形だ。

「神風」と称される所以は、連邦レベルと地方レベルの政権与党が異なることにある。ワロン、ブリュッセルはPSを中心とした左派の連立で地域政府が作られる流れである。しかし、フランダースと連邦が右派&リベラルとなると、「ねじれ」現象が起こる。連邦政府の方向性と地方(ワロン&ブリュッセル)の方向性が合わない情況で国政がスムーズに進むとも思えない。暗礁に乗り上げてしまう危険性は高い。

 MRは姉妹党のOpen VLDを引き入れるにしても、唯一のフランス語政党として政権に入った場合、ワロン、ブリュッセルのフランス語系住民の要望に応えられないかもしれず、政党としての自殺行為となる恐れがある。

 ベルギーでは、リスクを承知で難しい政治局面に突入することを「神風特攻隊」と重ね合わせて見られている。文字通り「神の風が吹いて国を守ってくれる」のか、「無謀な攻撃」に終わってしまうのか、今後の連立交渉の展開に注目が集まる。