N-VA党がベルギー連立政府から離脱。移民協定に反発。

安全で秩序ある正規移住のグローバル・コンパクト「国連移民協定」が、欧米先進国の政治を揺るがしている。ベルギーでは北部フランダース地方の右派政党であるN-VAが、ベルギー連邦政府から離脱することを表明。バート・ド・ウェーヴァー党首の「シャルル・ミシェル首相がマラケシュに行くならば、政権からN-VAを追い出すことになる」という言葉通りの展開となった。

波紋を広げる国連難民協定

国連の報告によると、世界には2018年現在2億5800万人の移民がいるという。出身国の政治経済の不安定さから移住を余儀なくされている難民、より豊かな生活を求めて祖国を離れる移民たち。国連は、こうした移民らが滞在国でより安全で人権の守られた生活を送ることができるように、法的拘束力はないが、23の目的からなる国際的な枠組みを形成しようと取り組んでいる。

右派政党の反発による参加拒否

移民受け入れに反対するトランプ政権のアメリカをはじめ、欧州各国でも中東やアフリカから押し寄せる移民の波に危機感をもつ右派政権の国々が協定に難色を示している。
オーストリア国民党の若き首相セバスティアン・クルツが離脱を表明すると、東欧諸国でも非参加にまわる国が出てきた。豊かな国の左派政権国と発展途上国の右派政権の二極化が進んでいる。

ベルギーの連立政府が分裂

12月10、11日にモロッコのマラケシュで開催される国連移民協定の政府会合に行くか行かないか、この会合が移民政策の踏み絵のような様相を見せるなか、ベルギーではリベラル、キリスト教保守、右派の連立にヒビが入った。

N-VAはフランダース地方の右派政党で、党首はアントワープ市長のバート・ド・ウェーヴァー氏である。彼自身は連邦政府に参加していないが、同党の方向性を決定するリーダーである。移民社会の貧困化、思想の過激化は、社会主義政権時代の無責任な移民政策の結果だと主張してきた。

また、ミシェル内閣の難民移民担当国家書記は、N-VAのテオ・フランケン氏が務めていたが、今回のマラケシュ騒動で辞任となった。移民や難民に対して厳しい態度を取っていると、メディアや人権団体からしばしば非難されてきた。彼を含む5人の大臣職が12月9日付けでミシェル首相に署名付き辞表を提出。そこには、マラケシュ協定がN-VAの理念と相容れないため、政権内にとどまることはできないと書かれている。それでは、N-VAの移民についての考えはどのようなものか?

N-VAの移民政策の微妙なニュアンス

同党は、移民の受け入れについては慎重な姿勢を見せている。ここが微妙なところだが、決して移民を受け入れないと「完全拒否」しているわけではない。

「受動的」つまり国連やEUなどに押し付けられる形での移民受け入れには反対であり、自国に有益であると判断される人材(労働力や頭脳)は「自発的」に歓迎すべきであるというのが基本姿勢だ。

また、保護が必要な難民に関しては人道的な配慮で受け入れるべきであるとも考えている。こうした移民や難民は、基本的権利を享受するだけではなく、オランダ語の学習をはじめ、受け入れ側の地域に同化するなど「義務」も負うべきであるとも主張している。

極右政党のように、移民を頭ごなしに拒絶する姿勢ではないものの、独自の価値観、判断によって移民政策を実施していきたいという思想がある。それだけに、国連の主導する国際的な枠組みには入りたくないという主張を、行動に移したことになった。

 

10.dec.2018

協定の概要(英語)
https://refugeesmigrants.un.org/migration-compact

photo: N-VA党公式サイト(蘭語)

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