コラム:王様の大切な仕事

日本の天皇陛下が首相や大臣、政党の党首と面会するという場合、それは外交儀式や何かしら行事に限られると思う。

陛下が首相を呼びつけて「お前のあの政策はけしからんから、すぐに撤回しろ」なんてお言葉を下されることは考えにくい。そういう事態になるとニュースとしては面白いが、まず憲法第一条に天皇は象徴であるとはっきり書かれている。

さてベルギーでは・・・。連立政権が瓦解したおかげでミシェル首相はフィリップ王を訪問して状況を説明し、内閣総辞職を申し出た。

(状況というのは、他の記事でも紹介したが、移民問題をめぐってN-VA党が離脱したので、議会の議席の3分の1しか与党が確保できなくなったのである)

たしかにマイノリティー与党というのは具合が悪い。それでも来年の5月の選挙まであと半年。それまでノラリクラリとやっていくのかと思いきや、急転直下ミシェル首相は筋を通して王様に辞表を提出したわけだ。

フィリップ王がそこで何とお言葉を発せられたか、具体的には知る由もないが、想像するに「まあ、クリスマスシーズンだし、政治家だって家族サービスしたいよね。総辞職のことはしばらく保留にして、また来年頑張ろうよ。ストレス溜まるよね。ビールでも飲む?」と暖かく励ましたのではないかと思われる。

実際に、王様のところで「保留」ということになって驚いた。これがベルギー政治における王様の仕事だ。

日本の天皇制に慣れ親しんだ私としては、首相が辞表を天皇に提出したら(実際にはしないけど)、もし陛下がそれを受け取ったならば、粛々と書類が作成されていくだけのような気がする。そこに「いや、保留で行こうよ」とか、「もう一回、考え直したら?」は絶対に存在しない。

象徴なんだから、政府が決めたことに口を差し挟む権利的なものはない。この前だって、秋篠宮様がちょっとお考えを述べられただけで、えらい騒動になっていたではないか。

ベルギーでは比例代表制がとられているため少数政党が複数生まれる。小選挙区制の日本のように第一党が大きく議席を伸ばすシステムではないので、政党間の交渉が大変だ。本当は選挙の後に行われる風物詩なのだが、王様が党首たちを順番に招いて王宮で話を聞くという作業が昨日あたりからスタートした。

やれやれ、年末に余計な仕事を増やしてくれたな、という声があちこちから聞こえてきそうだ。

ベルギーと日本と王室、皇室同士の仲がいいというのは周知の事実だが、非公式の場でこのあたりの意見交換、グチ大会なんてあるのだろうか。一度でいいから陛下、閣下たちの本音をこっそり聞いてみたいものだ。

 

written by Tyltyl 20.dec.2018

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