イスラム過激派のテロ事件とその余波

イスラム過激派のテロ事件とその余波

10月16日午後19時15分頃、ブリュッセル中心部のサンクトレット広場(Place Sainctelette)にて、銃撃事件が発生した。スウェーデン人3名が撃たれ、そのうち2人が死亡、もう1人もひどい重傷を負った。

犯人はスカールベーク地区に不法滞在しているチュニジア人の男性アブデスラム・ラスード(45)。事件後すぐに犯行声明をSNSに投稿し、そこでラスードはイスラム国へのつながりを示唆する発言を行った。

犯行の背景には、スウェーデンでイスラム教の枠組みに反対する活動家らがコーランを燃やすパフォーマンスを繰り返していることが考えられる。同様の行為はデンマークの極右政治家も行っており、宗教対立を煽ると問題視されているものの、両国の司法では表現の自由を理由に現在のところ禁止にまで至っていない。

事件の晩、ベルギー対スウェーデンのサッカーの試合(Euro 2024予選)が開催されたため、スウェーデンのサポーターがブリュッセルに数多くいた。被害者たちがスウェーデン・チームのユニフォームを着用していたためか、テロ攻撃の標的となってしまったようだ。試合は1対1のまま中断され、事件のことを知ったスウェーデン・チームは中止を要請。ベルギー側とUEFAの責任者らも同意し、試合はそこで中止された。再試合などは行われないと後日発表された。

事件を受けて、ベルギー政府はテロの脅威を最高のレベル4(ブリュッセル首都圏)そしてレベル3(ベルギー全体)に設定した。

 

犯人のアブデスラム・ラスード

 

警察による犯人の射殺

銃を持った犯人が現場からスクーターで逃走したため、警察が必死の捜索を続けた。犯行声明のビデオで顔や服装はベルギー中に知れ渡っており、早い段階で身元は判明した。

事件の翌朝、午前8時前に、スカールベーク地区の喫茶店にラスードがいることに他の客が気がついた。犯行時に着用していたオレンジ蛍光色のジャケットをまだ着ていたからである。

警察が喫茶店に駆けつけると、ラスードは銃を取り出して抵抗したため警察も応戦し、胸に弾丸を受けた犯人はその場で死亡した。最初の事件発生から13時間で捜索は終わった。

 

検察の書類ミスが発覚

事件後、犯人のラスードの経歴が明らかになった。母国チュニジアでは暴行事件で有罪となり1年ほどの懲役刑に服していたが、アラブの春の混乱にまぎれて脱獄し、難民船に乗ってイタリアのランペドゥーサ島に流れ着いた。その後、スウェーデンに移り、2012年から2014年の間、覚醒剤の売買の罪で刑務所に入れられていた。

その後ベルギーに居を移したラスードに対して、2022年8月に母国チュニジアからベルギー法務省に身柄引き渡しの請求があった。

その書類はブリュッセル検察に渡されたが、担当官が処理するのを忘れていたため、ラスードがベルギーに居続けることにつながったと発表された。

しかし、この担当官は有能ではあるが過去に汚職の疑惑がかけられた人物で、今回も何か不正があったのではないかという憶測も流れている。

最終的に2人のスウェーデン人の命が失われた重大事件の責任を負って、フィンセント・ファンクイケンボルネ法務大臣が辞職し、後任にはパウル・ファンティヒェルト氏が就任した。

 

辞職したフィンセント・ファンクイケンボルネ法務大臣

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