ベルギーでもワクチン接種についての議論がなされるようになってきた。ベルギー連邦政府および地方自治体の厚生担当大臣たちは、おおまかな方針で合意した。
・ワクチン接種は強制ではなく、個人の自由意志による
・市民には無料で提供する
・市民の7割がワクチン摂取することを目標とする(つまり800万人以上)
まずワクチンを確保し、それから医療機関で800万人もの大人数に接種を実施する方策を練らなければならない。すぐに完了できる事業ではないことは明らかである。一般に、コロナに弱い高齢者や病人、医療関係者をワクチン接種において優先させるべきであるという意見があるが、具体的な段取りは今後の話し合いによって決まる。
ワクチンへの疑い
急造されたワクチンによって逆に健康を害してしまうのではないか、という不安を抱く市民も多い。
9月初旬に実施されたアンケートでは、「絶対ワクチンを接種しない」12%、「多分ワクチンを接種しない」8%、「まだ分からない」27%という結果が出ており、5人に1人の割合でワクチンを拒否する意向が示されている。(Kantar調査)
高い有効性をうたう米国のワクチン
ここに来て、アメリカのファイザー・バイオンテック社とモデルナ社が、開発したワクチンが非常に高い有効性が認められると発表して話題になっている。
ファイザー・バイオンテック社は90%以上の有効性があるとして、米国、アルゼンチン、ブラジル、ドイツでの4万4000人の大規模な治験の調査結果を出している。これがアメリカ食品医薬品局に認証されれば、今年中にも2千万人にワクチンを提供することができるという。
モデルナ社は94,5%の有効性を示し、かつ保存期間がファイザー・バイオンテック社のものより長いため、輸送と保管において優れているとアピールした。
mRNAワクチンとは?
上記の米国2社が開発しているのは、mRNA(メッセンジャー・リボ核酸)ワクチンという種類である。
従来のように病原性をなくした細菌やウイルスが使われるのではなく、コロナが細胞に取り付くスパイク・タンパク質を作り出す情報コードだけを細胞内に送り届ける。
これを異物と判断した人体が、それに対応する抗体を生み出し、それが実際に侵入してきたCOVID-19の活動を防ぐ役割を担う。
遺伝子工学を駆使した、未だかつて承認されたことがない新しいタイプのワクチンだが、安全性が注目されて近年研究が進められてきた。
欧州医薬品庁は11月16日に、モデルナ社のスペイン支社が開発したmRNA1273ワクチンの調査を開始したと発表している。
ベルギーにおけるワクチンの実施の見込み
欧州ではワクチンの調達に関して共同戦線を形成する努力が行われており、ベルギーもその一員として参加している。現在、欧州連合と製薬会社5社との契約が交わされている。
最初は8月27日に、英国のアストラゼネカ社との契約が結ばれ、欧州医薬品庁も10月1日にいち早く同社がオクスフォード大学と共同開発しているワクチンの調査を開始したと発表している。
ちなみに、アストラゼネカ社のワクチンは、ウイルスベクターワクチンと呼ばれるタイプのものである。
今回のCOVID-19とは別のアデノウイルス系統のウイルスを利用したもので、接種後に体内でスパイク・タンパク質が生成され、これに対して人間の免疫システムが抗体とT細胞を作り出し、同様の性質をもつコロナ感染を防ぐ仕組みだ。効果は高いが副作用も一部で懸念されている。
実際にベルギーでワクチン接種が開始されるのは、年もあけて2021年1月以降になる見込みである。
また、ワクチンの種類も1つだけではなく、異なる複数のワクチンを採用という形になる可能性も指摘されている。
11月19日現在、ベルギーはアストラゼネカ社(774万本)、ジョンソン・エンド・ジョンソン社(516万本)、ファイザー(500万本)との契約が結ばれている。ワクチンは一人二本注射する。契約は欧州医薬品庁が認可した後に購買へとつながるため、もし認可されない場合は契約は破棄されることになる。
自分が接種するときには、具体的に何社のどういう種類のワクチンか確認し、記録しておくことも重要となってくるだろう。そして、場合によっては拒否することもできると知っておくとよい。
【参考】
欧州医薬品庁
https://www.ema.europa.eu/
アメリカ食品医薬品局
https://www.fda.gov/
欧州委員会(ワクチン調達について)
https://ec.europa.eu/info/live-work-travel-eu/coronavirus-response/public-health_en