発足したばかりのユンカー欧州委員会に動揺が走った。委員長ユンケルのお膝元ルクセンブルクの大企業優遇税制が問題視され、ユンカー氏が釈明する事態になった。
これは世界の有力企業340社に対してルクセンブルクが低い税制を設けて自国の税収を増やしたのではないかという2002年から2010年までの過去の問題だ。優遇税制を求めた会社としては、ペプシ、IKEA、FedEx、アマゾンなど、巨大企業ばかり。企業の本社や支店(もしくは郵便局の私書箱)をルクセンブルクに置き、込み入った経理処理をすることで大幅な脱税/節税が可能になったと見られている。
この件を調査して情報がリークするきっかけになったのはICIJという調査ジャーナリストの国際コンソーシアムで、26カ国から80人のジャーナリストが参加している団体である。彼らはPWC プライスウォーターハウスクーパースの税金アドバイザーが、大幅な課税回避の指南をしていたと指摘している。
例えば、アメリカ企業フェデックスはメキシコ、フランス、ブラジルで得た利益を香港支店に回し、それをルクセンブルクで課税させるという手法で0.25%のみ納税していたという。残りの99.75%は非課税。同じような手法で、ルクセンブルクやスイス、アイルランドなど優遇税制や金融工学に長けた国を迂回させて利益隠しと言われてもおかしくない行為が行われてきた。
ベルギーでは巨大ビール企業のABInbev インベブの大株主である de Spoelberch ドゥ・スポールベルフ家に脱税の疑惑がもたれている。
ユンカー氏は80年代後半から2013年まで財務大臣や首相を務めた。欧州議会で彼は「税体制を作ったのは私ではないが、政治的な責任はある。ただ、私のことを「大資本の友」と呼ぶのは間違っている」と述べた。フランスの極右勢力である国民戦線のマリーヌ・ルペンはユンカー委員長の辞任を要求。欧州議会でも、ルクセンブルクの税制に対する不信感が高まっている。
ソース:調査ジャーナリストの国際コンソーシアム
photo: © European Union, 2014