去る6月27日、フランスパリ郊外のナンテ―ルで、痛ましい事件が発生した。黒人少年が、警察官により射殺されたのだ。
死亡したのは17歳のナエル少年。車道を暴走していた彼の車を停めようと警察が合図を出したものの、応じず急発進したため発砲したところ、少年は命を落とした。
事件を受け、フランスでは各地で警察への抗議の声が高まり、暴動に発展している。マクロン大統領は、国民に落ち着きを取り戻すよう訴えたが、6月29日にはナンテ―ルで「白の行進」が行なわれ、再び暴動が起こった。マルセイユなど、他の地域にも抗議活動は広がりを見せている。
イル=ド=フランスでは、現在多くの都市で、暴動回避のために夜間外出禁止令が出されるなど、状況は深刻だ。
抗議行動は、ベルギーにも飛び火している。6月30日には、ブリュッセルの中心部で、SNS上の呼びかけに応じた若者が集まり、101名が逮捕された。また、リエージュでも暴動が生じた。
発砲した警察官は、現在拘留されている。果たして司法は今後どのような判断をするだろうか。
L435-1をめぐる解釈問題
今回の事件の背景のひとつに、警察による武器使用に関する2017年の法律変更が指摘されている。このときL435-1という条項が追加されたのだが、問題のある運転手が警察による停車命令を拒否した場合、武器を使用していいことになった。
現場の警察官が「この車は放置すると人身事故を起こす可能性がある」と判断した場合などであるが、短い時間に適切な判断ができるのかなど疑問が多い。今回は第三者によるビデオが残っているため、警察の主張だけで事が終わるということはありえない。
警察官に有利な法律の条項が適用されるのか、それともアフリカ系住民に対する差別意識が悲劇の原因として、警察官に殺人罪が言い渡されるのか、微妙な判断であることは間違いない。