フランスのマクロン大統領が年金改革法を発布
年金改革をめぐる抗議運動で揺れるフランスで、新たな展開があった。ついに、エマニュエル・マクロン大統領(写真上)が年金改革法案に署名したのだ。
改革は、フランスの年金支給開始年齢を現行の62歳から64歳へと引き上げるという内容で、今年1月以降、全国で反対派のデモやストライキが繰り返されてきた。
3月16日には、ボルヌ首相(写真下)により、無投票による強行採択が行なわれたため野党が反発し、法案の合憲・違憲性を判断する憲法評議会に審査を委ねていたところだった。
4月14日、評議会は政府の推進する年金改革法案の主要な条項を合憲とする判断を下した。
マクロン大統領はすぐさま法案に署名し、発布。今年の9月初めには施行される見通しだ。
これを不服とする民衆により、パリを中心に多くの都市で激しい抗議デモが行われた。パリ市庁舎の前には約3000人が集まり、治安部隊との衝突も起き、112名が逮捕された。リヨンでもデモ隊と警察とが対峙する緊張状態が生じた。
民主主義の危機?
労組連合は「これで終わりではない」とコメントし、5月1日に行われるゼネストへの参加を労働者たちに呼びかけた。
また、左派連合NUPESの代表ジャン=リュック・メランション氏も「闘いは続く」と強調し、「傲慢さの馬鹿馬鹿しい誇示だ」とマクロン大統領への抗議の意志を露わにした。
政治コメンテーターや学者も危機感を表明。歴史・社会学者のピエール・ロザンヴァロン氏は、「革命の時がまたやってくるかもしれません。あるいはひどい怨恨が積もり積もって、極右のポピュリズムが訪れる可能性もあります」とリベラシオン紙のインタビューに答えた。
反対者の多くも「民主主義の危機」だと訴えており、反論を押し切って法案を成立させたマクロン大統領をベルギーのメディアも「大統領君主」と揶揄している。
4月17日に、マクロン大統領は演説を行い、反対の声を認識しつつも、「この変化は、国民の年金の保証のため、そして我々の国家をより豊かにするために、必要だった」と、改めて年金改革の重要性を訴えた。
フランス国民の三分の二が改革法案に反対していると見られ、これからも抗議の声が上がり続けることは間違いない。
ベルギーの年金
ベルギーでは、法定定年年齢は65歳と、すでにフランスよりも高い。そのうえ、2025年からは66歳、2030年からは67歳へと年金受給開始年齢は段階的に引き上げられる見込みである。ただし、勤続年数によっては、早期退職して受給開始時期を早めることも可能だ。
また、日本とベルギーとの間には、2007年以降、社会保障協定が締結され、両国の年金加入期間を通算して、いずれか一方の国の年金を受給できるようになった。
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