Timeless Beauty ベルギー最古の街トンゲレンで出会う「永遠の美」

【2016-17 アーカイブ記事:このイベントは終了しました】
女性の美って何でしょう? 時代によって流行も変わりますし、「美人」の定義そのものが文化によって異なります。「永遠の美」なんて存在するんでしょうか?

「ベルギー最古の街」と称されるトンゲレンで現在、美しい女性のヌード写真とローマ時代の美容関連オブジェを組み合わせた興味深い展覧会が開かれています。タイトルは、Timeless Beauty。永遠普遍の女性の美を探しに、トンゲレンへ時間旅行してみませんか?

ブリュッセルから東に車移動で1時間。今回、ガロ・ローマ博物館の展覧会は「女性の美」がテーマです。瞳、唇、髪、歯、体毛、胸、服、宝石、薫り、化粧、体型、年齢、肌などに関連した、2000年前のローマ時代の考古学的オブジェと、その時代の詩の引用がテーマごとに配置されています。女性の裸体美にうっとりして進んでいくと、しだいに古代と現代がせめぎあい、混じりあい、ふと気がつくと女性の美という迷宮にさまよいこんだことに気づきます。

彼女は言葉でそうしたわけではない
顔と絹のように柔らかな腕と黄色の髪で
私の愛人は魔法をかけたのだ
(詩人ティブッルス、紀元前50年頃)

いつの時代も女性は美しくありたいと願い、男性はその美を褒め讃えたのです。

Timeless Beauty展は、写真家マーク・ラグランジュ(Marc Lagrange 1957-2015)の初の「回顧展」でもあります。実はラグランジュ氏は2015年12月に不慮の事故で亡くなり、58年という短い人生の幕を降ろしたばかりなのです。彼は「古代ローマ時代の宴会」をテーマに作品を作って展覧会をしようと、ガロ・ローマ博物館と生前に約束をしていました。事故死から1年も経たないうちに、残された家族は悲しみが癒えないままながらも、故人の意志を引き継いで今回の展覧会を実現させたのです。

ラグランジュ氏は、ファッションなどの広告写真で活躍しましたが、彼自身がアーティストとして官能的な世界のなかの完璧な女性美を創り出すことに才能を発揮しました。彼の描き出す女性たちは、ただ若くて綺麗というだけでなく、その美しさの中に強さを感じさせるのも興味深いです。実際、同じモデルさんを長年に渡って自分の作品に登場させています。

美は儚く、過ぎ行く年月はそれを食い尽くすように減じてしまう
スミレや美しく開いたユリも永遠には咲かない
バラの花も吹き散れば、硬いトゲが残るばかり
それでは長く残る心を養い、お前の美に加えればよい
炎がお前を焼き尽くしてしまうときまで、それだけが残るのだから
(オウィディウス、紀元前43年〜紀元17年) 

展示設計を担当したのは、競争の厳しいデザイン・コンペで最優秀に輝いたSHSH Architecture + Scenography。ブリュッセル拠点の日本人建築家デュオは、建築と舞台芸術の両方を得意としており、今回も細かいところまで神経が行き届いた舞台演出を見せてくれました。

古代と現代を行ったり来たりする悠久の「時間旅行」に厳格な順ルートはなじまないと、来館者が自分のペースと興味のおもむくまま、ゆったり歩いて回ることができる配慮が展示レイアウトに反映されています。その先の展示が透けて見えるような薄い布で区切るなど、テーマからテーマ、空間から空間への移行も、物語の章が自然に変わっていくかのような印象。

「永遠の美」。その秘訣がこの旅で発見できるかもしれません。貴方もぜひトンゲレンへお越しください。

【展示会情報】
Timeless Beauty展
会期:2016年12月17日〜2017年6月30日(会期延長! 2017年8月31日まで)
開館:火〜金 9:00 - 17:00 土日祝 10:00 - 18:00
※月曜は祝日でも休館。

ガロ・ローマ博物館 Gallo-Romeins Museum
Kielenstraat 15, 3700 Tongeren 
+32 12 67 03 30
http://www.galloromeinsmuseum.be/

博物館では、子供向けワークショップも実施中。