ずるずるラーメン5周年 特別なラーメンで、 新しい挑戦の幕開け

ずるずるラーメン5周年 特別なラーメンで、 新しい挑戦の幕開け

「ずるずるラーメン」は、日本での修行経験のあるベルギー人のニック・ホフマン(Nick Hofman)が腕を振るうゲントのラーメン屋さん。(青い鳥2022年9月号でも紹介 リンク

美味しい地元食材を使い、本場である日本のラーメンの味を、高いレベルで実現している。このたび開店5周年を記念して、毎週土曜日の晩は、ニックさんの新作ラーメンを提供することになった。

5周年スペシャルについて

今回の「和牛ラーメン」は特別な食材を使っているので、どうしても数量限定になります。まず、トッピングの和牛のお肉は日本からオーガニックのものを直輸入しています。スープの素材である牛骨も、地元フランダースの牧場で育てられた和牛のものを使っています。

日本でも和牛を使ったラーメンはめずらしいはずです。実際に私も試行錯誤を繰り返しました。香りのバランスを取るのが難しいので、既成概念にとらわれない思考が必要でした。

骨は24時間連続して煮込みます。弱火でじっくり煮ると清湯(チンタン)という澄んだスープになります。そこに牛の深い味わいが移り、ニンニク、たまり醤油、柑橘などで甘味、うま味、酸味などの奥行きを演出していくのです。

器も今回のためにベルギーの作家さんにロゴ入りで特注したものがあります。赤いどんぶりに、清湯スープが入るとより色鮮やかに見えます。

さらに、特別ラーメンに合わせたモクテルを楽しんでいただき、お帰りの際には日本関係のグッズを盛り込んだトートバッグをお土産にお渡ししています。

 

和牛スペシャルは、トッピングに日本から輸入された和牛がのっている。今回の産地は鹿児島県。

 

オーガニックや地産地消には、とてもこだわっていらっしゃいますね!

可能な限り、すべて自家製にしようと、常日頃から努力しているところです。麺の小麦も、ここから近い製粉所から仕入れて、自分で製麺しています。

 

和牛の次はどんなスペシャル・ラーメンを予定しているのですか?

新年一月からは、オイスター・ラーメンを予定しています。日本での修業時代にお世話になった師匠にアドバイスをいただいて、私独自のレシピを開発しました。

カキはエコでサステイナブルである認証のあるものを仕入れて、油、スープ、トッピングに使います。麺は札幌ちぢれ麺を細めにして合わせるつもりです。

いろいろなアイデアがあるので、これからも誰も食べたことのないようなラーメンを作り出したいと思っています。

特別メニューは、油、タレ、スープ、麺、トッピングというラーメンを作るうえでの5つの要素のすべてにおいて、既存のレシピや他のだれかの真似ではなく、ゼロから創造しています。

ずるずるラーメン店主のニックさん。日本で食べたラーメンの味に感動し、横浜で修行を経た後、ゲントに自身のラーメン店を開業。妖怪が大好きで、お店を飾るアート作品も妖怪がテーマ。自身の性格はキュートないたずらっ子、タヌキに似ているとのこと。

 

なぜ新しいレシピに挑戦するのですか?

5周年に際して、修行時代に習った通常のラーメン以外にも、こうした新しい味を作り出すことができる料理人として技術を証明したいという気持ちがあったからですね。そして、また一歩先に進んで成長したいとも思いました。

もちろん、新しいアイデアが必ず上手く行くとは限りません。そんなときは、一端冷蔵庫に放り込んでドアを閉めるように、保留の状態にします。(苦笑)

和牛スペシャルも、コロナ禍の前に考えはじめたことです。春に日本に旅行して刺激をもらい、今回のイベントに向けて、自分を奮い立たせてようやく完成しました。

他のレシピもすべて構想に半年、実際にメニューに載せるまでには最短でも2ヵ月かかります。

私はまだまだ勉強中の身で、日本や世界を見渡すと、ラーメン・マスターと讃えられるべき素晴らしい料理人がいらっしゃいます。

日本で修行して、自分のお店を持ってから5年が経ちましたが、新米の料理人という気がすることさえあります。

水泳のプールがイメージとして浮かぶのですが、これまで私がいたところは子供向けの水位が浅いところです。それが進むにつれてどんどん深くなり、ある一線のところで、さらに急に深くなります。今、その点にいる心境です。

新しい味を出して、お客さんがどのように反応するのか、もしかすると惨めに失敗するかもしれない。日本でも和牛ラーメンで成功している例は少ないのですから、なおさら恐怖に感じます。

それでも、深いところに思いっきり飛び込まないと、達人の域に近づくことができません。

時間をかけながら、いくつもの問題を解決しながら得られた経験は貴重なものでした。新レシピの開発は、自分のラーメンに対する情熱を燃やし続けるために、とても重要なことなのです。

お客様には、料理人の努力と心意気が、一杯のラーメンから少しでも伝わると嬉しいなと思っています。■

Zuru Zuru Ramen
Kortrijksesteenweg 110
9000 Gent

Open
Tue-Thu 12:00-14:00, 18:00-21:00

Fri-Sat 12:00-14:00, 18:00-21:30

Sun & Mon Closed

Website
http://www.zuruzuru-ramen.be

 

Interview : Hiroyuki Yamamoto & Photo : Camille Liebaert