毛沢東時代の中国で実際に起きたスパイ事件と、プッチーニ作曲のオペラ《蝶々夫人》とに触発された、David Henry Hwangによる1988年のブロードウェイの大ヒット戯曲『エム.バタフライ』(1988年トニー賞受賞)。
1992年には映画化もされた作品が、2020年、作曲家Huang Ruo(黄若)と戯曲作家との協力でオペラになり、2022年アメリカでJames Robinsonの演出で世界初演された。
今回のモネ劇場欧州初演ではKrystian Ladaが演出する。このフランス人外交官と京劇歌手の恋の物語は、当事者の視点からの「幻想と現実の境界の曖昧さ」を描写し、ジェンダーの慣習や文化的な権力構造を覆すオペラとなった。
全3幕 英語 約3時間
♪M. Butterfly「エム.バタフライ(蝴蝶君)」ヨーロッパ初演
作曲:Huang Ruo(黄若フアン・リュオ 1976年~)
初演:2022年7月30日 Santa Fe Opera
指揮:Carolyn Kuan 演出:Krystian Lada
公演日:4月20,22,25,27,30日、5月2,4日
開演:19h30 日曜日15h
チケット発売開始日:11月27日
モネ劇場ウェブサイト(英語)
https://www.lamonnaiedemunt.be/en/program/3935-m-butterfly
第1幕
1986年パリ。
あるパーティーの客たちが、フランス人外交官と中国の京劇歌手との情事のことで嘲笑している。
当事者のガリマール(バリトン)は、刑務所の独房から、自ら自分の物語を語り始める。
1964年、新設された北京フランス大使館に勤務するガリマールは、京劇を観劇し、「蝶々夫人」を演じる歌手ソン・リーリン(宋麗玲)(コントラテノール)を目にする。
そして、自分がオペラのピンカートン役で、魅惑的なソンが「西洋の悪魔」に従順に服従する「東洋の女」である蝶々夫人だという幻想を抱くようになる。
彼の幼なじみのマルク(テノール)が夢に現れ、彼の新しい恋を祝福する。
ガリマールは歌手ソンのアパートを訪ね、2人はお茶を飲むが、彼女は彼を帰らせる。
その拒絶により、彼は数か月間オペラから遠ざかるが、やがてソンから再会を望む手紙が届く。
上司のトゥーロン仏大使(バリトン)が、ガリマールに副領事への昇進を伝える。
彼はその知らせを伝えるため、すぐにソンのアパートに駆けつける。
第2幕
1986年パリ。
パーティーの客たちは、「ガリマール事件」に関するさらなるニュースを読んでいる。
1966年、フランス大使トゥーロンは、副領事のガリマールと、アメリカのアジアにおける計画について協議する。
一方、中国人民解放軍の同志チン(メゾソプラノ)は、歌手ソンに、フランス側の機密情報をスパイすることで革命に貢献するよう求める。
トゥーロン大使がアメリカ人とガリマールへの信頼を失ったため、ガリマールは降格処分を受け、左遷される。
ガリマールはソンのアパートを訪れ、彼女に服を脱ぐよう迫るが、ちょうどその時、ソンが妊娠していることを告げ、彼は思いとどまる。
彼は喜びに燃え、「君と結婚したい!」と叫ぶ。
ソンは同志チンに、7か月後に金髪の男の赤ん坊を手配するよう指示する。
トゥーロン大使は、ガリマールが本国フランスに送還されることを伝える。
ガリマールはソンを一緒にフランスに連れ帰るつもりで彼女のアパートに駆けつけるが、そこはもぬけの殻だった。
怒りに燃えた中国革命京劇団の団員たちが舞台に登場する。
第3幕
革命京劇団は、「Actor-Oppressor(主体となって他者を不当に抑圧する存在)」である歌手ソン同志に対する儀式的な糾弾を行い、彼女の更生を勧告する。
同志チンは彼女に、フランスにいるガリマールのもとへ行き、毎週報告を送るよう命じる。
やつれ果てたガリマールは、10年前にフランスに戻った時のことを回想している。
孤独と失意に沈み、常にソンの記憶に苛まれていた彼は、誰彼構わず自分の身の上話をしようとしたが、耳を傾ける人は誰もいなかった。
突然、ソンが現れる。
再会に心を躍らせるガリマール。
そこへ、フランス防諜機関の捜査官2人が現れ、彼をスパイ容疑で逮捕しようとする。
捜査官は、すでにソン氏から自白を得ていると主張する。
ソンは目の前で、中国服をまとった女性からアルマーニのスーツを着た男性へと変貌する。
場面は、ソンが証言する法廷へと移動する。
裁判官(バリトン)が「ガリマールはあなたが男性だと知っていたのか?」と尋ねると、ソンは「裁判長、ご存じでしょう。私は一度も尋ねたことはありません」と証言する。
刑務所の一室で2人きりになるソンとガリマール。
ソンは彼に真実を見せるため、服を脱ぎ始める。
ガリマールは「自分は『嘘』を愛していただけなのだ」と抗議し、「純粋な想像の世界で生きる方がましだ」と宣言してソンを追い返す。
ダンサーたちが舞台上のガリマールに加わり、着物を着せ、かつらをかぶせ、化粧を施すのを手伝う。
そして、今やガリマールは「蝶々夫人」そのものとなり、幕となる。

