「ジェノサイド共犯」は避けたい西側諸国

「ジェノサイド共犯」は避けたい西側諸国

昨年10月7日のガザを拠点とする軍事組織ハマスのイスラエルに対する攻撃を機に、中東の紛争は先の見通しができない混迷が続いている。

アメリカ合衆国と欧州諸国は当初イスラエルの自衛権を擁護していたが、イスラエル国防軍(IDF)がテロリスト掃討を口実に一般市民を多数巻き添えにした攻撃を展開した結果、国際世論はその非人道性に反発し、西側諸国も盲目的にイスラエルを支援することが不可能な状況になっている。

 

ジェノサイド認定の恐れ

国連の調査によると、2024年10月22日時点でのガザ地区のパレスチナの死者は42.718人。現在210万人の市民のうち9割が家を追われて避難生活を送っており、34万人以上が非常に危機的な食料不足に苦しんでいる。


国連の国際司法裁判所(ICJ)は1月の時点で、イスラエルに対してガザ地区でジェノサイドを防ぐように対策を講じるように暫定命令を出した。

さらに7月にはパレスチナ占領政策は国際法違反であり、ヨルダン川西岸と東エルサレムのユダヤ人入植を停止するべきであると異例の勧告を発している。

ガザのパレスチナ難民に食料や医薬品など救援物資を届けるようにアメリカも働きかけているが、どこまでの効果があるのかは見通せない。

ICJなど国際機関が、イスラエルがジェノサイドを実行していると正式に認定できるかどうかは疑問だとしても、極めて重大な人道危機がさらに深刻化していることは明白な事実だ。

戦闘員か一般市民かを問わずイスラム系住民を殺害する、あわよくばパレスチナの自治区から放逐するなど民族浄化作戦が展開されるなか、西側諸国としては「ジェノサイドに加担した」という汚名を歴史に刻むことだけは避けたいはずである。


武器の提供は米、独、伊

ストックホルム国際平和研究所の調査によると、2019年から2023年までのイスラエルの武器輸入は、約7割がアメリカ合衆国、約3割がドイツ、そして1%未満のほんの小さな割合がイタリアからのものである。

【写真 / ドイツ首相オラフ・ショルツは「武器を送らないと決定したわけではない」と回りくどい答弁に逃げた。】


第二次世界大戦中、ナチス政権がユダヤ人を迫害した暗い過去をもつドイツでは、一貫してイスラエル支持の発言が続くが、実質的には武器禁輸に動いている可能性がある。

ドイツの2023年のイスラエルの武器輸出は3億2650万ユーロだったのが、2024年の1月から8月中旬までの金額は1450万ユーロと激減した。これは3月にニカラグアがドイツに対して「ジェノサイドの危険性があるなかでイスラエルを軍事支援をしている」とICJに提訴したことも無関係ではないだろう。

ドイツのオラフ・ショルツ首相は、武器の出荷が滞っていることを批判する野党の追求に対して「我々は武器を送らないと決定したわけではない」と歯切れの悪い答弁をし、「これまでも武器を届けてきたし、これからも送る予定だ」とだけ述べ、具体的な計画は明かさなかった。

 

Genocide Convention
ジェノサイド条約

1948年に国連総会で採択された人権条約で、ナチスが組織的にユダヤ人を殺害したホロコーストを契機に作られた。ジェノサイドとは国民、人種、民族、宗教的な集団を破壊する意図をもって行われる殺人、肉体・精神的被害を与える行為、強制的な生活条件の押しつけ、出生防止、子供の強制移動などを意味する。共犯も処罰対象となる。

【写真 / イタリア首相ジョルジャ・メローニ。国連レバノン暫定軍(UNIFIL)に対するIDFの攻撃を非難した。】

【写真 / イギリスは偵察飛行機をガザに飛ばし、ハマスの動向について情報提供を行っていると見られている。写真は首相キア・スターマー。】

 

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