EUと南米メルコスールが経済協定で歴史的な合意

EUと南米メルコスールが経済協定で歴史的な合意

EUと南米の経済的結びつきが2024年末から新しい展開を迎えている。

12月6日に欧州連合はメルコスール(南米南部共同市場)と、貿易に関する協力体制の合意に達した。依然として域内産業の保護対象となる品目が残され、施行は段階的であものの、関税や手続きなどを撤廃する自由貿易的な取り決めは双方の経済圏がそれぞれの強みを活かしながら発展する土台となりそうだ。

2019年版からの更新

実は2019年時点ですでに政治合意はなされていたのだが、EUの農業関係者の反発と、南米における森林伐採など環境破壊の懸念から頓挫していた。今回は気候変動に関するパリ協定などサステイナビリティーの項目を盛り込むことで、より具体的に関税撤廃への道が開けたことになる。

まず、9割がたの品目について関税が廃止されるため、年間40億ユーロの関税支出が削減される見込みである。

EUは特に自動車や繊維関連の産業が南米市場へのアクセスを要望した。メルコスール加盟国の人口は合計2億7300万人と大規模だ。

さらに、南米はレアメタルなど原材料の産出地域でもあるため、世界各地の紛争や米中対立など世界が緊張するなかで安定したサプライチェーンを確保することはEUにとって極めて重要だ。世界情勢の不安定化がこの合意の背景にあるとも言える。

欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長(写真中央)は、工業大国ドイツの出身。南米の大統領たちに囲まれて笑顔。

農業国、農家の反発

ただし、欧州の工業国は自由貿易に賛成、農業国は南米からの安価な農畜産物の流入を脅威に感じて合意に反対という構図がある。フランスやイタリアなどは反対派だ。

ベルギーでも南部ワロン地方で、合意に反対する農家がトラクターで道路を封鎖する抗議デモを実施した。

関係者らは、南米の商品は欧州の厳しい基準と同じ条件で作られておらず、信頼できるトレーサビリティーもない状態では食の安全性が確保できないと訴えた。実際に、欧州では農家に厳しい環境保護や家畜飼育についての倫理規定を設けており、農業経営は年々難しくなっている。

ベルギー北部フランダースでも農業は盛んだが、アントワープなど港湾は貿易の拡大に利益拡大のチャンスを見出している。

農業も部分的に成長する?

現在、EUの商品にかけられる関税は、例えば自動車部品が35%、機械類20%、化学製品18%、医薬品14%などと高額であり、南米市場での優位性を保つのは難しい。関税撤廃は歓迎したいところだろう。
一方でEUの農産物の未来は暗く、不透明さが増した。しかしながら、高付加価値がつけられる商品は南米への輸出増大が見込める。取引高が多いのは、オリーブオイル、ワインその他アルコール商品、チーズ、チョコレートなどだ。高い関税が撤廃されれば、フランスのワインやベルギー・チョコレートもさらに売れるかもしれない。

MERCOSUR
メルコスール

正式加盟国はアルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ、ボリビアの五ヵ国。域内では関税のない自由な貿易により経済活動を活性化させている。関税同盟でもあり、EUなど他の経済圏と貿易するときは共通関税を課す取り決めとなっている。南米の他の多くの国々も準加盟国としてつながりを持ち、今後さらなる発展も期待される。

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