EU新入国管理システムで空港混雑 夏の旅行シーズンに長時間待機が問題化

EU新入国管理システムで空港混雑 夏の旅行シーズンに長時間待機が問題化

欧州で夏の旅行シーズンが本格化するなか、EUが導入した新たな出入国管理システム(EES=Entry/Exit System)の影響で、多くの空港で長蛇の列が発生し、乗客が飛行機に乗り遅れるケースが相次いでいる。

EESはEU域外(第三国)からシェンゲン圏に入国する旅行者を対象に、顔写真と指紋を登録・照合する生体認証システムで、従来のパスポートへの入国スタンプに代わるもの。2026年4月から本格運用が始まり、不法滞在者の把握や偽造身分証の使用防止、テロ対策など国境警備の強化が目的とされている。

しかし、導入後は各地の空港で処理能力が追いつかず、ピーク時には最大5時間待ちとなる例も報告されている。2026年4月12日、イタリア・ミラノのマルペンサ空港では、100人以上の乗客が出国審査に時間を要し、マンチェスター行きの便に乗り遅れた。

欧州空港評議会(ACI Europe)は、「EES全面導入後、待ち時間が大幅に増加し、欧州の主要ハブ空港だけでなく観光地の中小空港にも影響が広がっている」として、状況は危機的だと指摘している。

EU欧州委員会は、「EESはEU市民の安全を高めるために不可欠な制度であり、旅行者への影響を最小限に抑える努力を続けている」と説明。一方で、欧州最大級の格安航空会社ライアンエアーは、「システムは夏の繁忙期に対応できる状態ではない」と批判し、混雑時には従来のパスポート押印方式へ一時的に戻せるよう求めている。

ある旅行ジャーナリストは、「すべての空港で問題が起きているわけではないが、一部では3~5時間待ちという受け入れ難い状況が続いている」と指摘。指紋登録が初回のみのはずなのに、再入国時にも再登録を求められる例があり、システムが本来どおり機能していない可能性があるという。

また、混雑の原因はシステムだけではなく、人員不足や設備運用の問題も大きいと分析している。実際には利用可能な自動端末(キオスク)が稼働していない空港もあり、技術面と運用面の双方に課題があるとしている。

専門家の間では、「生体認証の導入には、不法滞在者や要注意人物の把握という明確な安全保障上の意義がある」と評価する一方、「EU加盟国ごとに設備や運用状況が異なるため、導入初期の混乱は予想されていた」といった意見があがる。

システムが安定して機能するまでには、あと1~2年程度かかる可能性があるとも見られており、大規模な生体情報データベースのサイバー攻撃リスクや、将来的に監視機能が拡大していく『機能拡張(Function Creep)』にも注意が必要であると指摘されている。

旅行の専門家らは、EU域外から今夏シェンゲン圏を訪れる旅行者に対し、「到着後の予定には余裕を持たせ、長時間の待機を想定して行動することが望ましい」と呼びかけている。

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