「家の中では靴を脱ぐ」…。日本では当たり前のこの行為も、西欧ではいささか奇異に見られることもありますよね。日本人の習慣を理解して下さる外国人の方は大分増えてはきたものの、修理に来た人や現地の友人を自宅に招いた時など、この習慣を説明するのに多少苦労をされた経験をお持ちの方もいらっしゃるのでは?
知人の某氏によると「“履いた靴を含め初めて完成された身だしなみ”と考える西洋人にとって、人前で『靴を脱ぐ』ことは、人前で下半身だけ下着姿になるのに等しい」とか?? 事の真偽はともかくとしても、洋の東西を問わず、何気ない日々の動作のなかに、実は長くて深~い経験や歴史の蓄積、またそれぞれの気候風土に育まれた風習や習慣が凝縮されているのではないでしょうか。
ところで、“このお店”で“このビール”を頼んだら、誰でも「靴を(片方)脱がなければならない」という愉快なパフォーマンスのカフェがあります。今回は、そんなお店をご紹介しましょう。
ゲントの金曜広場(Vrijdagmarkt)に面する「ドゥ・ドュル・フリート」は、“巨大フラスコ型グラスのビール”とそれを注文した時の “儀式”で知られるユニークなお店です。ここの「MAX」という銘柄のビールを注文すると、まずお店の人がカランカランと鐘を鳴らし、天井から紐で釣り下げられたかごが降りてきて、そしてあなたの履いている靴の片方を差し出すよう要求されます。“なんでまた…?” 実は、お客の中にその“巨大フラスコ型グラス”を持ち帰ってしまう人がいたため、盗難防止対策として片方の靴を人質(?)にしているとか。
さて、そうこうするうちに、あなたの目の前には高さ50センチはあろうかという巨大フラスコのグラスに入ったビールが、木製スタンドに鎮座ましまして登場します。なるほど、数あるベルギービールの中でもチョット珍しい巨大グラス、片方だけの靴でスタコラ持ち逃げする“盗人”の気持ちも判らないではない(?)程の迫力です。ビールの量は、およそ1リットル。飲みやすい味わいのビールとはいえ、かなりの量なのでご覚悟の程を。またグラスを水平以上に傾けた時、“鉄砲水”のように流れてくるビールをこぼさないよう気をつけて下さいね!
ところで、かごの中に取られた靴は、いつ返してくれるのでしょうか…? ダイジョウブ、お勘定が済んだらちゃんと返してくれますのでご心配なく。
これまで来白した家族や友人達にも、このパフォーマンスは大受けでした。いくら家にあがる時は靴を脱ぐ民族でも、お店で、しかも片方だけ靴を脱ぐ(取られる)という経験はなかなか出来ないですものね!?
*同じくフラスコ型グラスで有名な「Kwak」(勿論こんなに大きくない普通サイズですが)と、この「MAX」は、別の銘柄のビールです。
De Dulle Griet
Vrijdagmarkt 50,
9000 Gent
文・ボナペティオンライン