トレイン・ワールド

トレイン・ワールド

初めてベルギーで蒸気機関車が走ったのは1835年、ブリュッセルーメヘレン間でした。それから少しずつ線路を伸ばし、網の目のように国内からヨーロッパへ広がっていきます。

最初は時速20キロほどだったのが、どんどん開発されて速度を上げ、人々は旅に出て世界を広げていきます。19世紀、鉄道は憧れの乗り物でした。

そんな鉄道の歴史を知ることができる博物館トレイン・ワールドがブリュッセルにあります。スカールベーク駅の旧駅舎が博物館に変身しました。

昔の駅のオフィスが再現され、当時の切符発行機や電話やアナログな発車案内板など、まるでつい今まで駅員さんが使っていて席を外しただけといった風に置いてあります。駅舎内で見逃せないのは、蒸気機関車を製造する前に造られた10分の1のモデル。非常に精巧に作られています。

そこから一旦、駅舎を出て別館へ入るとまた別世界。今や役目を終えた、昔の列車が体を休めるように並んでいます。

かつての郵便馬車が郵便列車に取って変わられます。列車の中が郵便局のようになっていて、移動中に仕分けをしていました。

王室用のロイヤル・トレイン。レースのカーテン、手の込んだ調度品や家具など、まさにやんごとなき雰囲気が漂う空間。

憧れの頂点は、オリエント急行。アガサ・クリスティーの推理小説でも有名なオリエント急行は、ベルギー人の銀行家の息子ジョルジュ・ナゲルマーケルスが1872年に設立した国際寝台車会社です。

開通記念列車は1883年10月4日夜にパリ・ストラスブール駅(現パリ東駅)を発車し、6日かけてトルコのコンスタンティノープル(現イスタンブール)に到着しました。寝台車、食堂車、どこもかしこも贅沢な造り。

駅で使われていた様々な物。皮のトランクを載せた荷車。車掌が合図を送るための手持ちランプ。日本なら銭湯にありそうな体重計は、コインを入れると体重の証明書が紙に印刷されて出てくる仕組み。駅には欠かせない大時計。券売機・・・。レトロなSFの世界へ迷い込んだような気分になります。

かつてベルギー国鉄所有の列車の客室に飾られていた画家ポール・デルヴォーの絵4枚は必見。デルヴォーが繰り返し描く夜の駅舎、重々しい列車、白く輝く、佇む少女。トレイン・ワールドの世界観がそこにはあります。

ちなみにベルギー国鉄はDuo Ticketという一人分の料金で二人乗れるお得なチケットを現在キャンペーンで特別に販売しています。(2022年8月31日まで)また、12歳未満の子供は、大人一人あたり四人まで無料なので、Duo Ticketと組み合わせると、大家族での旅行も経済的に大変助かりますね。

車での旅行はドライバーはなかなか景色を楽しむ余裕はありません。たまには列車の旅をして、心ゆくまで車窓を楽しんではいかがでしょう。(文・織姫)

 

●場所:Train World トレイン・ワールド

●住所: Princess Elisabeth Square 5, 1030 Schaerbeek

●開場:火~日・祝:10:00-17:00

●料金:14ユーロ、若者割引あり6歳未満と67歳以上は無料

●URL:www.trainworld.be/en

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