ダッフルコートはベルギー発祥。デュッフェル産の丈夫な織物で作られた労働者のコート

ダッフルコートはベルギー発祥。デュッフェル産の丈夫な織物で作られた労働者のコート

冬の寒い日に大活躍のダッフルコート、実はその発祥がベルギーにあることをご存知でしたか?

角のボタン、フード、肩の補強布が特徴的なダッフルコートは、少しカジュアルな感じで個性的。愛用のダッフルを長年着ているよ、という方も多いのではないでしょうか。

あまりに日常的なので、ダッフルコートの発祥ってどこ?なんて考えたこと、ありませんよね。

実は、ダッフルとはベルギーのアントワープ州にあるデュッフェルという町に由来します

Duffelとつづります。ダッフルというのは英語の発音で、正式には現地で話されているオランダ語でデュッフェルと発音するのです。

(ベルギーはフランス語、オランダ語、ドイツ語が公用語)

デュッフェルの市役所 photo :Michielverbeek

 

ベルギーと織物の歴史

ベルギー、特に国の北半分であるフランダース地方は、歴史的に毛織物やリネンの織物などが盛んでした。豪華なタペストリーは世界中に愛好者を生み、遠い日本でも京都の祇園祭の山車(鉾)に、ブリュッセルで1600年前後に制作されたものが装飾として使われています。

布の生産は、ベルギーが産業構造を変化させていくなかで年々減少していきましたが、フランダース地方には、織物機械の世界的なメーカーが存在するなど、伝統は現在にも引き継がれています。

 


ダッフルコート誕生

ダッフルコートは、そもそも労働者や兵士などが着用するために作られた機能的なコートです。分厚くて、頑丈で、すぐには雨も通さない布地として、デュッフェルの布が使われました。

このデザイン自体がどのように生み出されたのかは諸説あるようですが、1850年代にイギリス人のジョン・パートリッジ(John Partridge)が現在の形を生み出したという説が有力です。そのパートリッジも、19世紀初頭のポーランドのフロック・コートに着想を得たと言われます。ポーランドのものは、すでにトグル・ボタンとフードがついていたそうです。

特徴的なボタン(トグル)は、手袋をしたままでも脱着可能という利点があります。また、フードは当然ながら雨対策。そして、肩の補強布は、丸太や大きな荷物などを担いで運ぶ作業に適しています。すべてが、野外で働く人々のための機能としてデザインされたものなのです。

(1942年のイギリス海軍 © IWM A 13971)

イギリスでは海軍などに採用され、第一次、第二次世界大戦などの史料写真を見ると、戦艦の甲板でダッフルコートを着た兵士が働いているのが分かります。

戦後は若い学生がファッションとしてダッフルコートを取り入れ、その機能性が重宝されました。この時代に生まれた「くまのパディントン」も青いダッフルコートを着ています。

photo : Dick Thomas Johnson LINK
 

発祥の地であるデュッフェルでは、残念ながら布の生産は行われていません。もし貴方がデュッフェルで生産された布地でダッフルコートを作りたいと思っても、昔の生地をどこかで発掘することから始めなければなりません。

しかし、町の入口にダッフルコートの彫像が立てられており、昔の名残を今に伝えています。

 

photos: Aoitori Belgium

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