ベルギーでの重曹の買い方とソルヴェーの歴史

ベルギーでの重曹の買い方とソルヴェーの歴史

NaHCO3という化学式を持つ白い粉。いえいえ、怪しいものじゃございません。日本語では「重曹」という名前で、生活のあらゆるシーンで重宝されております。

お店で重曹を買う

ベルギーで重曹を探そうとするなら、まずフランス語 bicarbonate de soudeオランダ語 zuiveringszout という言葉を知らなければなりません。

さらに、お掃除やお洗濯などに使う工業的な重曹なのか、お料理などに使う食品としての重曹なのか、それによって差があります。ガスコンロの写真が載っていたりするパッケージを見れば、それがどれかは分かるとは思いますが、、、注意が必要ですね。

上記の重曹(仏語、蘭語)に加えて、食品用= alimentaire (仏語)/ voedsel (蘭語)という言葉と、、、掃除= nettoyage (仏語)/ schoonmaken(蘭語)という言葉も知っておくと、お店の人にメモを見せれば、ばっちりですね。

そもそも、英語ができる優秀な店員さんなら、I need some baking soda for cooking / cleaning!で、話は終了です。

 

重曹とベルギーの深い関係

ここから少々マニアックで古い歴史にお付き合い願います。熱心な青い鳥読者の皆さんならついてこられるはず・・・。

重曹こと炭酸水素ナトリウムは、まず1791年にフランス人化学者のニコラ・ルブランが製法を生み出して、現在の姿になりました。

さらに1846年にアメリカでオースティン・チャーチジョン・ドワイトが工場を作って重曹を製造開始し大成功します。

1863年にベルギーでエルネスト・ソルヴェー(1838-1922)が工場を設立。ルブランに代わる独自の製法を生み出し、後にこのソルヴェー法は重曹製造の主要な方法として確立します。

ソルヴェーの興した会社は、現在も存在しており、例えば冒頭の写真、お掃除用の重曹 Bicar Net (商品名)のパッケージ右下をよく見ると、SOLVAYと会社のロゴが入っていて、嬉しくなります。

 

ソルヴェーの生きた街ブリュッセル

エルネスト・ソルヴェーの足跡は、ブリュッセルの街に今も残っています。しかも、派手に存在を主張するものばかり。

一番有名なのは、アールヌーヴォー建築の巨匠ヴィクトル・オルタが設計したソルヴェー邸ではないでしょうか。(写真上)注文にあたって「金に糸目はつけない」と言われたオルタが全力を注ぎ込んだ傑作になりました。ただし、これはエルネストではなくて、息子のアルマン・ソルヴェーの注文によるものです。まだの方は、ぜひ内部にも入っていただきたい。パパが発明した特許で得た財力の凄まじさを見学できます。(予約制)

科学の発展に寄与したいと考えたエルネストは、現在のEU地区にあるレオポルド公園内で、科学研究所図書館の設立に関わります。ビブリオテーク・ソルヴェーは、中規模コンサートや会議などが開かれる貸し会場として使われています。

エルネストが発起人である世界の科学者を集めたソルヴェー会議は、初回は1911年にブリュッセル中心にあるメトロポール・ホテル(現在コロナで廃業の危機)で開催され、その後はレオポルド公園の科学研究所で続けられました。

第5回となる1927年は、エルネストがすでに他界した後ですが、参加者29人中17人がノーベル賞受賞者となる豪華な顔ぶれ。アルベルト・アインシュタインマリ・キュリーなども参加しました。

経営学修士(MBA)に興味のある方は、ブリュッセル自由大学(ULB/仏語系)のキャンパスにソルヴェー・ブリュッセル・スクールがあるのをご存知でしょう。

イクセル地区にソルヴェーの社屋がありましたが、周囲が歩行者天国になる際に移転して、現在は住居用アパートになってしまいました。会社も創業者一族の手をほぼ離れて、世界で2万4000人を雇用する国際企業に発展。CEOはモロッコ系フランス人の女性です。時代は変わりました。

それでも、旧社屋の近くには創業者の名前を冠したエルネスト・ソルヴェー通り(Rue Ernest Solvay)があり、重曹の歴史に思いを馳せるにはいいかもしれません。

 

自然派の生活を志す方は、健康や環境に優しい重曹を大切に使っていらっしゃることでしょう。ベルギーとのご縁を思って見直すと、またさらに愛情が沸くかもしれません!

便利な生活情報コラム

おすすめ新着記事