手摘み露地栽培のイチゴ畑を訪ねて

 手摘み露地栽培のイチゴ畑を訪ねて

朝市やスーパーのフルーツコーナーに真っ赤でつやつや、見るからに甘そうでみずみずしいイチゴが並ぶと、「ああ、夏がもうすぐやってくる! 当分イチゴが楽しめるなぁ~!」と、心踊る気分になりますよね。

“どうせなら新鮮でしかも甘いものをゲットしてやるゾ~”と目を凝らしてパックを吟味しているアナタ、労なくしてベルギーで最高に美味しいイチゴを味わってみませんか?

ボナペティいち押しは、ナミュールに程近いウェピオン(Wépion)のイチゴ。国内でも珍しい、露地栽培のイチゴ畑を訪ねました。

 

ベルギー唯一の露地栽培地域

ナミュールから約5キロ、ミューズ川近くのウェピオンは、知る人ぞ知る「イチゴの里」。

現地に行く道すがら、その朝に摘んだイチゴを売る露店が所々に並び、いやが上にも期待感が高まります。そもそも暖かい地方で栽培されるというイメージのあるイチゴですが(日本では主に関東以南)、なぜベルギーではここワロン地方のウェピオンでイチゴ作りが盛んなのでしょう。

それは、このウェピオンの地質が粘土質だったこと、また濃い霧がたちこめやすい気象条件だったことがイチゴ作りにおおいに幸いしたようです。

 

歴史をひもとくと

もともと野生のイチゴは古代より存在していたようで、ローマ時代には薬効があったとの記述が残っています。

13世紀頃までは、イチゴといえば森の野生のものしか知られていなかったのですが、18世紀になるとチリから持ち込まれた新種により栽培自体が可能になり、19世紀には品種改良も重ねられ一般的に広く栽培されるようになりました。

これまでに600以上も品種改良され、より大きく、より甘く、より長い収穫期間のものが出来るようになりました。

そのような中、ここウェピオンでは1880年頃から食用のイチゴ栽培が盛んになりました。現在15の栽培農家がありますが、露地栽培を手掛けているのは実はわずか3農家のみ。

そこでその中の一つ、ベルナール・ウィムさんからお話を伺いました。


ウェピオンのイチゴには、作り手の愛が一杯!

ところで皆さんは、ウェピオンのイチゴを食べたことがありますか? えっ、ない? それでは次のことをヒントに探してみてください(ブリュッセルではデレーズ、ロブなどのスーパーで買えます)。

・紙の箱に山盛りに入っている

・箱にウェピオン(wepion)と書かれている

・ラップがかかっていない

これがウェピオンのイチゴを探す主な手掛かりです。

ラップをかけないのは、とにも角にも愛するイチゴのため(熟したものを摘むので痛みやすい)。そして“てんこもり”(500gとあるが実はそれ以上)は、自信があるゆえの大サービスといったところでしょうか。

ラップの内側に水滴がたくさんついた(蒸れた?)、見えるところだけ赤い(2段目は熟してないもの)、食べたら見た目よりも固くて酸っぱいだけのイチゴに遭遇すると、まさにガッカリ…ですよね。

ウェピオンのイチゴはなかまで真っ赤で、甘くて程よい酸味があります。

 

手間のかかる栽培

ウィムさんの農場で栽培されているイチゴは、主に3種類。大粒で甘みも多くジューシーなElesanta種、とにかく大粒のDarselect種、香の良いMada des bois種を、時期をずらして植え付けています。

前年の8月頃苗を仕入れ冬を越させ、3月頃植え付けし、5月から7月にかけて収穫します。その間、大敵のナメクジからイチゴを守るためワラを敷いたり、益虫を放して害虫を駆除したりと、極力農薬を使わずに栽培します。

こうして手塩にかけて育てられたイチゴは、(その年の気候にもよりますが)特に6月から7月上旬にかけて最もオイシイ時期を迎えます。

通常、朝6時ごろから手摘みで収穫されたイチゴは、紙の箱に山盛りに入れられ、更に木枠の箱に並べられ、つぶれないように上部との空間を保たれた上で出荷を待ちます。

そしてその日の夜には地元の組合施設でセリに掛けられ、翌日には店頭に並び、皆さんの手に届くわけです。

近年温室栽培が主流になるなか、頑なに露地栽培にこだわり続け、常に試行と検討を繰り返すウィムさんの姿勢には、すでにアルティザンの風格が感じられます。

我々はイチゴの収穫ばかりに目が行きがちですが、数年単位のサイクルで管理調整する畑の状態や、また品種改良を重ねるだけ病害にも弱くなりやすい品種の栽培・管理には、並々ならぬ努力と苦労をされているようです。

一度食べたら忘れられない美味しさを提供し続けてくれるウィムさんですが、実はお父様からこの家業を継ぐ前は、7年間デスクワークを経験されていたとか。

教師をしていらっしゃる奥様との結婚を機にこの家業に戻り、夏には牛も飼う、と笑うウィムさんの目は、都会の企業戦士とはまた違った、自然と常に対峙している人独特のすがすがしさを感じさせてくれました。

 

今年のイチゴは美味しいかな?

昔からのことわざに、「精霊降臨祭(Pentecôte)にイチゴは赤くなり、三位一体の祝日(Trinité)後の最初の日曜日に籠に摘み、キリスト聖体の祝日(fête-Dieu)に好きなだけ食べる」というのがあるそうです。

ウェピオンのイチゴは、6月から7月上旬にかけて最高といわれますが、美味しい時期の見極めと、今年の出来を素人でも予想できるヒントを少々…。

1.冬がちゃんと寒かったかどうか(寒さを経験しないと実が小さくなる)

2.ただし冬が長引かず、春が遅くないこと

3.収穫期は暑すぎず寒すぎず(人間にも丁度いい気候がイチゴにも良い)。

さて、今年の出来はいかがでしょう?

尚、ロブにはイチゴの他に農協製の100%ナチュラルジャムやクーリも置いてあるそうです。

*今回の取材に当たり、農協の会長クロード・ルシャさんに大変お世話になりました。  

 

文・ボナペティオンライン

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