ヴィレールス修道院・美しい廃墟に出会う小旅行 Abbaye de Villers

ブリュッセルから車で1時間弱の距離を南に走ると、森と麦畑に囲まれた自然のなかに、12世紀からの歴史を面影に残した修道院の廃墟が現れる。

建物のほとんどが壁や基礎部分しか残っておらず、崩れた部分には雑草や木が生い茂る「廃墟」となっている。美しい廃墟というと不思議な感じだが、日本でも廃墟ばかりを載せた写真集が出版されたり、失われたものに対する哀愁をテーマに旅行を計画することもあるだろう。修道院の敷地内を歩き回ると、ジブリ作品『天空の城ラピュタ』のような建物と自然が一体になった風景に出会うことができる。

ヴィレールス修道院(Abbaye de Villers)はシトー会の修道僧が祈りを捧げた教会と居住空間が残された歴史遺産だ。キリスト教のカトリックの一派ではあるが、豪奢な装飾を排し、自然のなかでの質素な共同生活を志向した。教会、回廊、宿舎、キッチンなど、その部屋が何に使われていたのか分かっている。また、普段の生活では修道僧同士でも会話することを禁じられたため、会話をするための部屋もある。素行の悪い僧は暗い牢屋に放り込まれた。白い僧服に身を包んだ修道士たちが、どのような生活を送ったのか、想像しながら見歩くのは楽しい。

遺跡となったのは、フランス革命の余波を受けてのことである。18世紀末にヴィレールス修道院は強奪され、建材業者に売却され、立派な建物はまもなく解体されてしまう。

すっかり荒れ果ててしまったが、19世紀の文人たちはこれを「ロマンチック」とし、遺跡の景観に美を見出した。なかでも文豪ヴィクトル・ユーゴーは3度も訪問した。彼はここでスケッチをし、名作『レ・ミゼラブル』にも修道院への言及がある。

1972年に歴史遺産に指定されて以降は、修復管理が徹底され、年間10万人もの訪問者を魅了している。観光以外にも、地元コミュニティーのイベント会場として使われており、天気のいい日には家族でピクニックも楽しめる。

修道会について

「修道会」という信仰の形の起源は6世紀のヌルシアのベネディクトゥスにさかのぼる。古代ローマの貴族の家に生まれたが信仰の道に進み、田舎で労働をしながら神への祈りを捧げる生活をはじめた。73の短い章にまとめられた「聖ベネディクトゥスの戒律」には、キリスト信者としての精神的教えに加えて、日々の生活や修道院の運営についての実務的な指導が書かれている。ベネディクト会は現在も存続するが、長い歴史のなかで数多くの分派が誕生した。10世紀初頭には政治力が強く荘厳なミサをおこなうクリニュー会が現れ、その反発の中から質素を重んじるシトー会も生まれた。

Abbaye de Villers
Rue de l'Abbaye 55,
1495 Villers-la-Ville
+32 71 88 09 80
サイト

11月から3月まで秋冬シーズン 10-17h(火曜定休)
4月から10月まで春夏シーズン10-18h(毎日オープン)
※クリスマス新年・休日あり

memo1: 牢屋(Prison)の近くにカフェがある。ヴィレールスで作られたビールIXとVはワロン地方トップレベルの美味。特にトリプルのIXは青い鳥のオススメ印!(写真上)

memo2: 解説は英語あり。敷地が広いので、子供連れ家族は隅々まで見歩くと、なかなか疲れるはず。観光は2〜5時間。

memo3: 至近のレストランLe Moulin de Villersは美味しいが、料理が出てくるまで時間がかかるので注意。(30分〜1時間の待ち時間)

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