グランプラスの一角、常に観光客でにぎわう謎のブロンズ像。触れると幸せになると言われるセルクラースは、どんな人物かご存知ですか?
時は14世紀。ベルギーという国はまだなく、封建制度の領主が支配するフランス語でフィーフ fief と呼ばれる小さな地方に分かれていました。
あるとき、フランドル伯ルイ2世(画像上)が、ブラバント公ヴェンツェル1世の留守に乗じてブリュッセルを突然攻撃し、グランプラスに彼の旗を立てます。ブリュッセルの住民は反撃したのですが、現在のアンダーレヒトのあたりで撃破され、ブリュッセルがフランドルの手に落ちました。
しかし1356年10月24日、勇敢な地元のエヴェラルト・セルクラース Everard t'Serclaes が仲間と一緒に街の城壁をよじ上り、大騒ぎしながらグランプラスまで「ブラバント! ブラバント!」と叫びながら走ったのです。そしてグランプラスの星の家 Maison de l'Étoile に立てられていたルイ2世の旗を奪いました。この騒ぎでブリュッセルの住民は蜂起します。彼らは逃げるフランドル人を城壁から堀に突き落とし、ブリュッセルは再びブラバントの支配に戻ったのです。
ブラバント公ヴェンツェル1世(画像上)は功績のあったセルクラースを議員に取り立てます。彼は私心のない誠実な仕事っぷりでブリュッセルに貢献しますが、それがゆえに勢力を拡大しようとしていたガースベーク城主と衝突し、その怒りを買ってしまいました。
1388年5月26日、刺客に待ち伏せされ、セルクラースは大変な深手を負います。
そのときセルクラースは舌と右足を切り取られました。味方に助けられたものの、グランプラスの星の家に戻った彼は瀕死の状態です。そこにブラバント公爵夫人も駆けつけます。その頃にはブリュッセルの英雄の悲劇は民衆の怒りを呼び起こし、ガースベーク城は激しい攻撃の対象となります。美しい城はまったくの廃墟と化し復讐が遂げられます。
5月31日、傷が原因でセルクラースはこの世を去ります。グランプラスの銅像は傷つき横たわるブリュッセルの英雄の姿を表しているのです。そして、ブラバントの独立を象徴するシンボルでもあります。
ところで、伝説によるとこの銅像に触ると願いが叶うといいます。(旅人はブリュッセルに再び戻って来れるとも!)
特に腕に触るといいようです。(どうやら犬も人気ですが・・・)未婚の女性なら、1年以内に未来の結婚相手が見つかるとか。ぜひ、お試しください。
出典:Les Grands Personnages de l'Histoire de Belgique, Jeanne Van Schaverbecke