チルチルのひとりごと ビタミンD

冬場になると、軟弱な私はよく風邪をひく。こういうとき、ベルギーではまずドクター・ジェネラリスト(Docteur Généraliste)つまり総合診療のお医者さんが診て、風邪以上の深刻な病気と判断されると、専門医にバトンタッチされる医療システムとなっている。

私のかかりつけ医はルワンダ系の女医さんで、褐色の肌に大きな瞳、細かなカールのかかった長い髪の毛が印象的な美人さん。そして彼女は英語も話してくれる。全部フランス語だけだと理解できない医学用語もあるので、親切に英語も交えてくれるのは助かる。

しかし、若干憂鬱なのは、そのドクターSのところに診断に行くと、必ず血液採取されることだ。私の静脈は見つけにくい。幸い彼女は丁寧に脈をつきとめて慎重に針をさしてくれるが、それでも毎回自分の血が何本もの容器に入れられるのを見ると、気分的にめまいがしてきそうだ。

血液は近所のラボに送られて、簡単なものだと朝採って夕方には結果が分かる。今回もビタミンDが足りていないことが判明した。(まあ、他にも問題があって、結局それですったもんだしましたが、それはまた別の機会に)

さて、ビタミンD。

人間は肌を日光に当てることで自分でビタミンDを生成することができる。天気のいい日なら、1日30分も日光浴をすれば問題ない。もしくはサーモン、タラ、サバなど魚の脂にも含まれている。昔は北欧でとれるタラの肝から脂を抽出して、子供にサプリメントとして飲ませていた。太陽の少ない北欧では、子供が「くる病」という骨が変形する病気にかかる危険性があったからだ。

褐色の女医Sは、ビタミンDが足りないときに、サプリメントを処方してくれる。最初の1カ月は量を多めに、その後は毎日少しずつ飲むことになる。去年は小さなカプセルに入った液体をすするものだったが、今回はライム風味の錠剤だった。1年中飲みなさいと言われてしまった。

ビタミンDは骨を強くし、精神的にもストレス耐性を高める効果がある。ただし逆に、摂取過剰も問題で、吐き気、食欲不振、便秘、脱力感、体重減少、さらに重篤な精神障害や腎臓へのダメージが発生する。

成人の摂取上限は国によっても違う。日本では4000 IUとされている。ベルギーで私が処方されたのは最初の1カ月間は毎日6000 IUで、その後3000 IU。最初多めにするのが治療効果を高めるのか? サプリメント大国アメリカでは「取りすぎ注意」のネット記事が目立つ。ビタミン類は大量摂取したり、極端に少ないと、思わぬ健康被害を招く。

ところで、一生、毎日このビタミンDの錠剤を摂取すると決まった(?)からには、何を口にしているのか、知りたくなるのが人情である。しかし、錠剤のパッケージに入っている説明書を見ても、原材料が何か、はっきり分かる形では書かれていない。

ちょうどテレビでビタミン類に関するドキュメンタリーがあったので、録画して観た。

この「ビタマニア」という番組で驚かされたのは、昨今のビタミンDは、ヒツジの毛の脂から作られているということ。厚い羊毛に包まれたヒツジは、確かに皮膚に直接日光が当たることがない。そこで毛の部分でビタミンDを作り出しているらしい。オーストラリア産が多いと。

パッケージに印刷された「ビタミン」という名前と、風味付けの「ライム」のイラストにだまされて、まさかヒツジさんの毛を舐めているとは夢にも思わなかった。ビタミンというからには、なにか植物が原料だと先入観が働いたようだ。

北国ベルギーの、特に冬の日照不足は否定できない。野外で運動するタイプでもなく、白人に比べて肌の色がちょっぴり濃いめの日本人は、ビタミンDがなくては「うつ病」になってしまう。冬季障害というものだ。

実際に私もビタミンDを摂取しだして気分が明るくなった気がする。いや、そんな気がするのは、プラシーボ効果か? 「黄金よりも価値がある」と言われるヒツジの毛の脂を舐めながら、なんだか製薬産業の奴隷になった感じも、、、なきにしもあらず。

ビタミンDサプリを摂取すべきかどうか、あまり考えすぎるとかえって憂鬱になったりして。

29.nov.2018

 

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