ミチルのひとりごと 2020-21の年末年始

2021年。皆様、新年明けましておめでとうございます。

ベルギーに住んで10年以上になるが、新年をここブリュッセルの自宅で迎えたのは、何年ぶりだろう。

冬休みのこの時期は、日本に一時帰国するか、旅行をしていて、ブリュッセルで過ごすというのは、もしかするとベルギーに初めて来た冬以来かもしれない。 自分としては、これまで通り日本に一時帰国したいと考えていた。ところが、「いつでも帰っておいで」と常に私の帰国を心待ちにしていたはずの母が衝撃の一言を口にした。

「今年は帰らないほうがいいんじゃない?」

「ここは田舎なの。もし、あなたが帰国したら、私は村八分になるわ。この間も東京ナンバーの車がいたずらされたばかりなのよ。東京から帰省しただけで、そんなことだから、ベルギーなんて、とんでもない」

頭では理解できるのだが、内心とてもショックだった。欧州帰りの私から自分にコロナが感染することを心配しての発言ではない。周りの人々の反応を恐れてのことである。

 

東京に住む友人たちには、相変わらず満員電車で、レストランもカフェも開いている日本の話を聞いていた。ベルギーの厳しいロックダウンに閉塞感を感じ、できることなら帰国して、ちょっぴりでもいいから日本で普通の生活を送りたい、と密かに願っていたのだが、日本に入国後2週間の隔離などもはじまり、結局は断念せざるをえなかった。なんにせよ「帰ってこないで!」と思われているのに、帰国しても行くところがないではないか。

 

はて、こんなコロナの中で、一体ヨーロッパの友人たちは、どのようにこの冬休みを過ごすのだろう。日本への帰国の望みが絶たれた私は12月の初旬、ブリュッセルに住む友人たちに、年末年始の予定を聞いてみた。

その頃はまだどうなるかわからない状況で、みんなは政府方針を聞いてから判断するので、しっかりとした予定が立てられずにいた。出身国のフランスやドイツなど隣国に帰国するかもしれないけれど、ブリュッセルに残る可能性が高いという反応だった。

そんな中、一組だけ、北イタリアの雪山にあるロッジに例年通り行く予定だという友人夫婦がいた。そしてとてもありがたいことに、もし私も一緒に行きたければ、来てもいいよとお誘いまでしてくれる。

そういえば、去年も誘ってくれたのに、日本に帰国したから行けなかったのである。何もしないでいるよりは、気分転換にイタリアの雪山なんて素敵。

それに、スキーはできないという私には、ソリがあるという。ソリ!なんて素敵な響き。クリスマスに、ソリなんて、サンタクロースの気分になれる。私は、とても行きたかったのだが、悲しいかな、我が相棒は、大の寒さ嫌い。スキーなんて骨折しに行くようなもんだよ、とスキーヤーが聞いたら、笑い転げそうな理由で、頑として首を縦に振らない。

それにコロナだし、きっと雪山のロッジに閉じ込められて、何もできないよ。だいたいイタリアのスキー場でコロナのクラスターが発生したんだよという。

第一波の感染拡大は、スキー場のバーで大勢がワイワイ騒いでいたからだ。今は、人もいないし、マスクしているし、だいたいバーなんてどこも閉まっていて、外にいればコロナには感染しないと私は反論した。


しかし、残念ながらコロナの状況はどんどん悪化。国境閉鎖はないだろうという話ではあったが、イタリアに行くまでの、ドイツやオーストリアの国境で尋問を受けたら、ヨーロッパ人の友人たちは問題ないにせよ、私たち日本人が、どういう理由でイタリアまで行かなければいけないのか、これだけ政府から「不必要な外出を控える警告」が出ている中、正当化できる理由は見当たらない。

泣く泣くミチルは今回も魅惑的なお誘いを断り、ブリュッセルで久しぶりにのんびりと過ごすことになった。 そして気づいたのだ。こんな風にブリュッセルでお正月を過ごすのは、とても久しぶりで、ベルギーのお正月はとても静かだと。

もうひとつ気がついたのは、ずっと同じところにいて同じ日常を過ごすことは、自分にとってはとても退屈で、刺激が必要だということ。やっぱり年に一度の年末年始の大移動は私にとって必要なケジメだったらしい。

 

2021年は、コロナが収束し、日本への帰国や海外旅行が以前のように自由にできる環境に戻ることを、心より願って。

 今年が皆様にとって、良い年でありますように。

Mytyl 1.jan.2021

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